公開 2026.10.18更新 2026.10.18
Talieng|住環境と円卓
南ラオスの山地に暮らすTaliengの住環境と、食事の中心に置かれる円卓。その素材、構造、製作、燻煙までを記録します。
ラオス南部パクセーから大型バスで約6時間。さらにジープで山道を4〜5時間進み、二日ほどかけてTaliengの村へ向かいます。
村は南ラオスの山岳地域、標高約1,100mに位置します。道路の多くは赤土の未舗装路で、雨季には訪問や円卓の輸送も難しくなります。
山地の住環境



霧が立ち込める日も多く、夜間は10度を下回ることがあります。
住居は伝統的な木造家屋や高床住居からコンクリート造へ移行しつつありますが、調理には現在も薪が使用されています。
村周辺には小規模なコーヒー農園や畑が点在し、その先には森林が広がります。米のほか、とうもろこし、雑穀、かぼちゃなども栽培されています。
食事の中心にある円卓


Talieng円卓は、食事を囲む道具として使用されています。
炊いた米を天板へ直接広げ、中央に汁物や副菜を置き、家族で円卓を囲みます。米粒が落ちにくいよう編み目は細かく、天板は三層構造。食事の重量を支え、長期使用に耐える強度を備えています。
円卓は屋内の一定の場所に据え、修理や補強を重ねながら使用します。薪煙のある室内では素材が徐々に燻され、時間とともに色や質感も変化します。
二種類の竹


円卓には、用途の異なる二種類の竹を使用します。
天板用の竹は節間が約1mと長く、完成した表面には節がほとんど現れません。節間の長さは、製作可能な円卓の最大径にも関係します。



外周のラタンを固定する紐には、別種の竹を使用します。現地で「大麻竹」と呼ばれる竹の表皮を細く加工したもので、強度と耐久性があります。

いずれも村周辺の森林や畑の奥から採取し、それぞれの用途に合わせて加工します。
三層の天板

天板は三層を重ねて組まれています。
表面には細かな竹編みが続き、裏面には天板全体を支える補強が施されています。炊いた米を直接広げる用途に合わせ、密な編みと十分な強度を備えた構造です。
普段は目に触れにくい裏面にも、日々の使用を支える細かな仕事が表れています。
定規を使わない製作


Talieng円卓の職人は、定規やスケールを使わず、素材の太さや形を見ながら手の感覚で全体を整えます。一本ごとに異なる竹を用いながら、複数の脚を同じ高さに揃え、天板を水平に仕上げます。
脚を取り付ける穴は、かまどで熱した鉄杭を用いて開けます。脚を受ける部分には、竹ではなく木材が使用されることもあります。
脚は穴に合わせて一本ずつ削り、高さを調整します。位置が決まると先端に切り込みを入れ、竹製の楔を打ち込んで固定します。
熟練した職人の中には、釘や針金、接着剤を使用せず、素材同士の組み合わせだけで仕上げる人もいます。
職人ごとに異なる脚線




Talieng円卓は、一台ごとに脚の本数や太さ、長さ、反り方が異なります。
村では三本の竹竿を組んだ治具を用い、脚材に緩やかな反りを付けていました。竹竿の間隔や固定位置を調整しながら、それぞれの職人が形を整えます。
細かな仕様を統一するのではなく、素材の状態と職人の判断によって一台ずつ仕上げます。脚線には製作者ごとの特徴が表れ、誰がつくったものかを見分ける手がかりになることもあります。
村には円卓製作の技術を持つ職人が複数おり、その技術は世代を越えて受け継がれています。
素材の保管と燻煙

職人の木造家屋では、梁から竹材や完成した籠が吊るされています。屋内で保管しながら乾燥させ、薪煙によってゆっくりと燻します。
収納、乾燥、燻煙が同じ住環境の中で行われています。円卓も同じ空間で使用されるため、時間とともに色が深まり、素材の表情も変化します。
天板用の竹、固定用の竹、脚部の木材。円卓を構成する素材は、村周辺の環境から得られます。
身近な素材を用途ごとに選び、加工し、食事を支える一台の円卓へ仕上げる。
Talieng円卓の構造には、山地の住環境と暮らしが反映されています。





